onde
Hair salon onde
波紋(onde)という名前を持つ美容院のために、水面のように静かな空間と、その空間に溶けて広がっていく波紋のようなドレッサーを設計した。
ドレッサーは鏡を含む反射面が90度ずれながら立体的に噛み合い、数珠繋ぎとなるような構成の家具とした。その面はミラーガラス、ステンレスヘアライン、鏡面、ウレタン全ツヤ塗装など、周囲を柔らかく反射するような素材、仕上げとなっており、外の景色や、窓枠、内部のインテリアや人を様々な方向に映し出す。その中の一面がミラーとしてセットブース正面に配されている。美容院の鏡として作られたというよりは、反射面を持つ家具があり、その一面がたまたまセットブースとして使えている、というふうに見えるような状態を目指した。そうすることで、美容院と鏡という強い記号性を抑え、空間に溶けて、波紋のように広がっていくような風景をつくれるのではないかと考えた。
内装に関しては、元々は飲食店として建てられ、30年で様々な使い方をされてきた既存テナントの、既存の下地や枠、建具などをなるべく生かし、それらのコントラストを抑えるように、仕上げ材や配色を決めた。例えば既存サッシの白から床のモルタルのグレーまでの間を、中間色で塗装してコントラストを抑えるようにしたり、透過性の高い淡い色のカーテンを設置するなど、既存をベースにしつつ、静かで柔らかな印象の空間になるよう調整した。
何のためでもない場所があって、人がそこに座るとセットブースになり、人が去るとまた何のためでもない場所に戻る。機能や用途が浮かんでは消えるような空間が、美容院を訪れる人に、静けさや、安らぎを生み出すのではないかと考えた。
用途 | 美容院 |
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所在地 | 静岡県浜松市 |
WEB | 店舗ウェブサイト |
延床面積 | 105.03㎡ |
設計期間 | 2021.2-7 |
工期 | 2021.8-11 |
写真 | 長谷川健太 |
担当スタッフ | 清水美紅、小田海 |
MEDIA | 商店建築2022年10月号 |