House in Shizuoka
静岡の家
都市に対してどのように開くか、という問題は常に住宅の主要なテーマのひとつである。暮らしにおいて開放的になりたい状況と、閉鎖的になりたい状況は、一日の中でも、季節ごとでも絶えず変化しており、その変化に対してどちらかに偏るのではなく、適度に調整できるような住宅をつくりたいと考えていた。
ここでは、住宅の半分を占める大きな2層吹き抜けを、暮らしと都市との関係を調整する装置として、都市へ快適に開くことを試みた。
築40年超の事務所兼アパートを、住宅にコンバージョンしたプロジェクトである。敷地は静岡市の繁華街にほど近い、戦後すぐに開発された住宅街にあり、老朽化に伴う建て替えが近隣で多く行われ、将来的な環境が想定し難い状況にある。
既存鉄骨が露出した2層吹き抜けのリビングの上部に、大きな南北に連続した開口部を設け、空が見え、明るい広場のような空間をつくり、その吹き抜けに対して各個室の開口部が設けられている。この二重の開口部は、どこまでが室内でどこからが外部なのか、その境界が曖昧に感じられるような働きをしている。
吹き抜け上部の開口部は、隣家に対してもオープンになっており、リビングの様子は見えないが、その向こうの町並みには視線が開けていて、視覚的な都市のオープンスペースとして機能している。住宅の空間の一部が都市に共有されることで、密集地において周囲の人にとっても開放感を感じられるのではないかと考えた。
“家の中の広場の中の家”といえるような、復層的な構成が、都市に対して奥行きを保ちつつ開くという独特な距離感を住宅の内外につくり出している。
用途 | 住宅 |
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所在地 | 静岡県静岡市 |
構造 | 鉄骨造 |
敷地面積 | 102.34m² |
建築面積 | 50.35m² |
延床面積 | 85.74m² |
設計期間 | 2015.8-2016.3 |
工期 | 2016.3-2016.8 |
写真 | 長谷川健太 |
メディア | LiVES vol.91 住まいの設計3・4 2017 CASA BRUTUS No.207 June 2017 新建築住宅特集2019年2月号 |